相続対策で大事なのは節税ではなく分割対策だと思う。
相続。あまり考えたくありませんが避けては通れない話です。「うちは財産なんて何も無いから。」という方が多いのですが、もし、あなたやあなたのご両親がマンションや一戸建てなどのご自宅や不動産をお持ちでしたら、避けては通れない話題です。
☑節税(お金)よりも大事な相続対策がある
相続対策と言うと「相続対策で失敗しないための〇原則」と題したセミナーやレポートが巷に溢れています。
節税対策、納税対策、資産活用対策などなど。もちろんどれも大事なテーマです。でもコレみんなお金の話ばかり。確かに汗水たらして働いて築き上げた財産や先祖代々伝わる大事な資産を無駄に減らす必要はないと思います。
埼玉県東松山市で「お客様の節目節目に何度でも選んで頂ける不動産・建築会社」を着実に丁寧に目指している株式会社東上不動産・株式会社東上建設代表の宮村です。
数々の相続トラブル、争い、裁判事例を、不動産に携わる実務者として否応なく垣間見てきた僕の考えは少し違います。
もちろんお金は大事。でも、もっと大事なのは残された家族、身内が今まで通り仲良く暮らしていく、付き合っていけることなんじゃないか!?と思うのです。
☑揉めないように思いを遺言に残すことが大事
小手先の節税なんかよりも、よっぽど大事だと思うのは残された家族が揉めないようにあらかじめ手を打っておく事なんじゃないか。僕はそう思います。と言うのも仕事柄、本当に多くの相続トラブルをみているから(笑)。
節税対策が必要という事は何かしらの財産が手に入って、その入った部分に対して課税されるということ。だから言い方はちょっと違うかもしれないけど、貰った人は多少の税金を払ったところで別に損をするわけではないですよね。ほとんどの場合。
民法では、残された財産を相続人が均等に分けなさい、というのが大原則です。でも現実には「親の老後の面倒は俺がみてきたんだから多めに財産を貰って当たり前だ。」「お兄ちゃんは大学の高い学費を出してもらったり車も買ってもらっていてズルい。」「姉さんは嫁に行った時に家を建ててもらったじゃないか。」となって揉める訳です。え~!?って思いますか!?でも現実は他人から見たらもっと細かい内容で言い合いになってますよ。
いつまで昔にさかのぼって計算に入れるのが妥当なのか?とか、お金に換算できない介護問題とか、理屈ではなくて感情のもつれから相続が終わってみれば、家族兄弟がバラバラになってしまって二度と顔も見たくないというケース、裁判を何年も続けているというケースに仕事柄かなりの確率で遭遇します。
裁判になれば民法の原則が優先されます。個別の事情を赤の他人が大きな金額に置き換えるという判断は難しいのです。なので家族の事情に合わせて、揉めないように思いをあらかじめ遺言に残すことが大事なのです。
☑トラブルの一番の要因は親子間のコミュニケーション不足
数々の相続トラブルをみて来て思うのは、トラブルの一番の要因は親子間のコミュニケーション不足ではないか!?ということです。そんなことわざわざ話さなくてもきっと分かってくれているはず、というのは残念ながらほとんど伝わっていない(笑)。
生まれ育った時代背景もあるだろうけど、それぞれ皆が大人になってそれぞれの家族を持つと悪い意味ではなく価値観が変わってしまう。もともとの親兄弟の関係も大事だが、今は自分の世帯、自分の子供の将来を一番に考えるようになるのが普通です。だから「貰えるものは均等に貰っておきたい。」と考えるのはごく普通の感情なんです。
「誰に幾ら」と財産の分割を考えるとき、預貯金や換金性の高い株などは分けやすいので問題ない。決めた通りに分けてもらえば良い。でも見落としがちなのが不動産。家、不動産を相続させる子と現金を相続させる子の金額が概ね同じならトラブらないが、大抵の場合、不動産を相続する人の不動産を評価すると現金の人より金額が高くなってしまうケースが多い。そうなると他の相続人から異論が出て揉めてしまう。だったらその家を売って現金化して均等に分ければ良いじゃないか!?というのは全く正論だがスムーズに出来ないケースが多いのです。
誰も住まない空家なら直ぐに売却可能だが、誰かしら住んでいるとなると話は別。そう簡単にはいかない。だから揉めるのです(笑)。例えばこういうケースです。お父様は既に亡くなっていて、長男家族が実家で同居していたお母様が亡くなったとします。他に相続人はお二人の妹さん。それぞれにご家庭があります。実家の評価が2500万円。他に預貯金が500万円の合計3000万円が相続財産です。お母様の遺言などがなければ民法上3人のご兄弟は1000万円づつ分けることになります。
残された預貯金は500万円ですから、ご実家2500万円+預貯金500万円=3000万円を3人で均等に分けると一人1000万円づつ。もしご長男がご実家に住み続けるとなれば、お二人の妹さんそれぞれが1000万円受け取れるように1500万円用意する必要があります。伝わってますでしょうか!?
話がもっと複雑になるケースとして「お兄ちゃんは実家に住み続けていたんだからその間、家賃が掛からなかった。家賃10万円として1年で120万円。10年も同居していたんだからもう既に1000万円分はもらっていたのと同じはずだ。」という主張が妹さん側から出たらどうでしょう!?
でもこれ、屁理屈でも何でもない事実ですよね。みなさんそれぞれが所帯を持って生活をしていると、仲の良かったご兄弟でも色々と妬み、やっかみ、僻みが出てしまうというケースは多いと感じています。
税金を抑える話よりも、まずはご家族兄弟が今まで通り仲良く付き合っていけるよう分割について考えを巡らるほうが先決かも知れません。
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