「社員様パート様への手紙」　　　　　　　　　　　　　　㈱東上不動産　代表取締役　宮村明彦

毎月の給与明細の封筒にHOTLINEと称した社員様パート様への手紙を入れ始めたのは２０１１年５月のこと。以前、居酒屋和民を経営するワタミグループ渡邊美樹社長の「社長が贈り続けた社員への手紙」を読んで感銘を受けたことがきっかけでした。

当時、上場に向け、飛ぶ鳥を落とす勢いだったワタミフードの渡邊美樹社長。講演会のテープ（カセットテープだったのです！！）で地球上で一番たくさんの「ありがとう」を集めるんだ！！と言う渡邊美樹社長の力強い言葉を聞いて、いっぺんにファンになった。

平成５年、２７歳の時に東上建設と言う工務店を創業する機会を頂き、経営者としての道を歩み始めることとなった僕は、４０歳くらいまでの間、創業経営者や2代目が書かれた自伝やありとあらゆる会社経営、ビジネスジャンルの本を読み漁り、講演会やセミナーを片っ端から受講し、立派な経営者を目指すというよりも、経営者の端くれとして恥ずかしくない程度の人間には成長したいと思い、その心構えや発想力、考え方のようなものを学ぶのに必死でした。

40歳になった年に東上不動産の社長に就任し、数年経っても一向にうまくいかなかったことの一つが、自分が考えていることや方針が全くと言っていいほど社内に浸透しないということでした。

僕自身の姿勢や伝え方、頻度の問題もあったのかも知れません。でも、その時に頭によぎったのは「言葉に力はない・・・。」という事でした。思い出したのは渡辺美樹さんの著書。そうだ。創業者で上場経営者となった渡邊美樹さんほどの大社長、頭の良い人でさえ「社員への手紙」というコミュニケーションを未だにとられているのだから、恥ずかしいけど僕もやってみよう、ということで始めたのが給与明細の封筒にA4一枚の手紙をしたためるということでした。

給与明細の封筒に初めて手紙を入れたのが２０１１年５月２５日。折しも２０１１年３月１１日に発災した未曽有の東日本大震災で世の中が混沌としている時だった。電力不足による節電により街のネオンが消え、被災地域にあった工場からの供給が途絶え、放射能漏れによる原発周辺の帰宅困難地域の皆さんが集団移転を余儀なくされるなど、精神的にも経済的にも経験したことの無い状況と先行きへの不安から日本中が混乱を極めていた。

朝礼や会議などの場面で繰り返し繰り返し、言葉で思いを伝える、ということは続けつつも、文字、手紙にすることで、自分の頭の中も自ずと整理され、そもそも自分の覚悟が定まるということにも結果として繋がったのではないかと思います。

HOTLINEの内容、文章は、僕が考えたと言うよりも、そのほとんどは先輩諸兄からお聞きした言葉であったり、書籍から引用したものです。どこかで読んだことのある文章、耳にしたことのある言葉がたくさんあると思います。

と言うことで手紙の随所にパクリがある訳なんですが、その時々の僕の思いを他人の言葉を借りて表現したという点で、僕の心からの言葉になっていると言えるのではないかと思っています。←言い訳がましい（笑）。

同業、異業種を問わず、経営者としての悩み、舵取りについて、時々、質問を受けることがあります。そのほとんどは僕自身が過去に思い悩み、悪戦苦闘してきた事なので、まさに自分事として、どのことも凄く良く分かることばかりです。僕は現役の経営者であり、商売人の一人として、日々、色々な問題に直面しながら、今より少しでも良い人生、幸せな人生、豊かな人生をスタッフの皆様と歩めるよう一所懸命に取組んでいます。

成功者でも何でもない地方の小さな会社の経営者が書き続けている手紙が、いつの日か、２０年前の僕と同じように頑張っているどなたの役に立つかもしれない。そう思いました。会社特有のことや個人情報、個別の名称が含まれている部分は省き、時系列もランダムですが、その軌跡を少しずつ原文のままお見せしていこうと思います。
 

２０１8．3　　　　　HOTLINE

 

先月の２月２５日　東京マラソン２０１８に出走してきました。おかげさまで何とか完走出来ました。でもね。タイムは６時間１２分も掛かっちゃいました。指定された僕のスタート区画から都庁正面のスタート地点まで約２１分掛かっているのでネットタイムは５時間５１分。目標は５時間切りだったんだけど・・・準備が全く足りてなかった。少なくとも直前の１月、２月は月間１５０～２００キロの走り込みが必要だと言われているところ、僕は週一のジム通いで５０キロ弱しか走れてなかった。そんなキロ数で本番に臨んだのはフルマラソンが４回目で何とかなるだろうという根拠のない慢心から。

 

慣れということです。過去３回とも完走出来たんだから栄養満点で当日を迎えれば何とかなるだろう、なんて思っちゃったけどwww過去３回は夜、時間が取れない時は早朝走り込んだりしていたにも関わらず、今回は過去の成功体験と言う慢心が準備、練習不足を招いてしまった。反省です。

 

さて、お仕事に置き換えてみた場合どうでしょうか！？過去の成功体験。毎日の繰り返し。前例通り。自分だけは大丈夫。慣れ・・・僕には思い当たる節がいっぱいあります。そして当然、上手くいかない結果を既に招いてしまった事が実際にあります。皆さんはどうでしょう。大丈夫ですか！？

 

昔のように気合だけで乗り切れる時代背景でないのは明らかです。そして仕事は常に結果を求められるということ。結果に至るプロセスはもちろん大事だけど結果の伴わないプロセスは全く評価されない、評価しようがないということです。結果と言うのは業績もさることながら次世代社員を育てられていますか！？ということです。そこが出来なければあなたの人生は先細りです。昔の丁稚奉公の徒弟制度のような「俺の背中を見て覚えろ」だとか「仕事は教えられるものではなくて盗むものだ」などと上司が言ってるような会社はお先真っ暗です。

 

長い経験に基づいた判断が出来る、気づきがある、やるべきことは全て分かっているし実際に出来る、その人特有の感性、センスがある、などということはもちろん大事。でもそれ以上に、入社間もない新人さんや人生経験の少ない若い方にも分かるよう、出来るよう全ての業務プロセスを一覧表にして明示する、チェックリストを作って凡ミスを予防する、知っていることを口頭だけではなく文章化して誰にでも分かりやすく伝えられる、というのはもっと大事なことだと思うのです。会社というのは採用して育成することの繰り返しです。

 

「頑張ろう！」と思う社員様がいて「育てよう！！」とする企業風土が根付いた会社。人の育成にしっかりと取り組める。実績をしっかりと上げられる。そのことこそが人としての成長、幸せで豊かな人生に繋がるものと確信しています。繁盛期で何かと気忙しい毎日ですがご理解、ご協力をよろしくお願い致します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2018.3.25    宮村明彦